三角座りのお姉さん【怪談】

三角すわりのお姉さん

以前、設備の仕事に従事していた時のお話だ。
ある晩、機械室のベルトや薬液を点検していた。
いつもは、暗い機械室に照明を灯して中に入るのだが、その日は何者かが照明をつけたままにしていたようだ。
まあ、たまにはあり得ることだろうと、そのまま深く考えず点検を始めた。

最初の点検場所の近くで、不意に人影が目に入った。
一瞬驚いたが、「あっごめんなさい」と謝罪の言葉を交わし、道を譲った。
しかしその人は無言で深々とお辞儀をし、通り過ぎていった。
私はその人については知らなかったが、設備の鍵を持っていないと入れない場所だから、多分業者の方だろうと思いながら、点検場所に向かった。

点検を始めようとした瞬間、突如として照明がバチンと消え、真っ暗闇に包まれた。
「おいおい、さっきの人が間違えて照明を消したのか」と思い、声をかけたが、返事はない。
外に出た場合は、光が差し込むはず、設備の音だけが微かに聞こえるが扉の音はしなかったような気がした。
確かではないが、外に出た様子が見当たらない。

仕方なく、懐中電灯を手に入口まで戻り、再び照明をつけた。
だが、消した人の気配はどこにもない。
そして、再び点検を始め、普通に作業を終えた。

その後、薬液の点検で奥に進んだ先で、人がいるような気配を感じた。
思わず、さっきの人かと思い、よく見ると、ハッキリとは見えないが、白いモヤのようなものが、三角座りをしている女性のようにも見えた。
不気味な感じがして、「これは関わってはいけないような気がする」と直感したが、気になりつつも無視して作業を続けた。

おそらくはあせっていたのだろう、後で見ると、いつもとは違うガタガタの字でメモを取っていた。
もちろん、後で字を書き直すことになる。

その出来事を、霊感があると言っていた先輩に相談したところ、「ああ、あの古びた百貨店の制服みたいな服を着たお姉さんだな、たまに見かけるんだ。今日は座っていたのか。」と言われた。
他の人に話したら怖がるだろうと言われたので、その先輩以外には話さなかった。

その後、私はそのような出来事には遭遇しなかったが、その先輩は何度か同じような経験をしたと語っていた。
怪しげな存在、それが機械室の謎の一幕だったのだ。

今更ですが、三角座りは体育座りと言うらしいですね。

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